研究概要 |
アスピリン抵抗性の臨床検体での測定可能な新規検査法を開発した.本法は,血小板のex vivoでのアスピリン感受性の評価により検査するもので,アスピリン処理による血小板凝集抑制およびCOX-1活性抑制効果を50%抑制のアスピリン濃度(IC50)により数値化する.COX-1の活性は,血小板刺激後上清中のアラキドン酸の安定代謝産物TxB2の産生量で表される.血小板刺激アゴニストとしては,直接COX-1が作用してTxA2(TxB2)が産生されるアラキドン酸を用いるのが良いと思われるが,アラキドン酸に対する血小板凝集には個人差が大きいためトロンビンまたはコラーゲンを共に使用した.まず基礎検討として,洗浄血小板をアラキドン酸及びトロンビンで刺激してTxB2産生を見た.TxB2測定には,EIA法による測定キットを使用した.アラキドン酸80uM,トロンビン1u/mLでのTxB2のIC50はほぼ同等で,アスピリン2.5uM程度であった.次により簡便かつ確実なPRP(Platelet rich plasma)での測定系を検討した.アラキドン酸(600uM)およびコラーゲン(2mg/mL)で血小板刺激を行い,凝集計での透過光のIC50及び産生TxB2量のIC50を同時に測定した.上記洗浄血小板での結果と比べ,コラーゲンに関してはほぼ同様の値となったが,アラキドン酸では個人差が大きく,IC50がアスピリン1.0uM以下と著明に低下しており,高濃度のアラキドン酸を使うことによるcell lysesの影響や未知のCOX-1抑制経路の存在が考えられた.このためアゴニストとしてはコラーゲンを用いることとし,臨床検体での測定を考慮し10mL程度の血液検体で測定可能な系を構築した.本法でHbAlc 8.0以上の重症糖尿病患者でのアスピリン抵抗性の検索を開始した.
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