研究概要 |
近年「アスピリン抵抗症」が大きな臨床的トピックスとなっているが,アスピリン抵抗性の効果的で正確な評価法が確立されていないため,薬剤の吸収・血中濃度の個人差や被験者の服薬コンプライアンス等の要素を排した「真のアスピリン抵抗性」を診断することが困難であり,アスピリン抵抗性の存在・概念に未だ混乱を招く原因となっている.前年度までに我々は,in vitroでアスピリンをincubateしagonistに対する凝集反応・TxB2産生量を求めるという,アスピリン抵抗性の新しい客観的な評価システムを開発し,アスピリン抵抗性の疾患群候補である糖尿病患者での測定を開始した.本検査法の概略は,チトラート入り採血管(凝固検査のストピッツ)からPRP(Platelat rich plasma)を分離,in vitroで様々なアスピリン濃度(0,0.3-30uM)30分間incubateした後,コラーゲン(2ug/mL)による血小板凝集及び上清中のTxB2産生を測定するというものである.凝集/COX-1活性抑制効果と血糖コントロール(HbAlcおよび糖化アルブミンで評価)との相関を見るため,最も差が観られ易いと予想されるHbA1c8.0以上の重症糖尿病での解析をまず行うこととした.最初の5例の解析を行い,COX-1活性抑制は糖尿病と健常人とで全く差がなく,凝集では糖尿病で強い傾向があることを見出した.このCOX-1活性抑制に依存しない強い凝集の解析のため,引き続く5例において,アスピリン+ADP受容体阻害剤の検討を追加したところ,この「残存する強い血小板凝集」にはADP受容体P2Y12が関与していることが示唆された.現在,さらなる症例数の積みあげをおこなっているところである.
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