I型アレルギーでは、ヘルパ-T細胞のうちIL-4、IL-5などを分泌するTh2が活性化して、IgE産生や好酸球の活性化をおこすことが分かっている。これらのサイトカインはlgG産生も誘導するので、我々はI型アレルギーでおこるTh2の活性化により、バセドウ病の病因lgG抗体であるTSHレセプター抗体(TRAb)産生が誘導され、バセドウ病が増悪するのではないかと推定している。これを証明するためには、アレルギー性鼻炎を合併したバセドウ病患者の末梢血リンパ球をスギ花粉で刺激することでTRAbの産生が見られることを証明する必要がある。しかしながら従来のTRAb測定法では、その感度の問題でこのことを証明することができなかった。最近になってTRAb測定法は第3世代が開発され、その感度が向上したことを受けて本研究では、アレルギー性鼻炎を合併したバセドウ病患者の末梢血リンパ球をスギ花粉で刺激し、TRAbの産生を調べることで、アレルギー性鼻炎によるバセドウ病の発症メカニズムを証明することにした。 本年度は当初の計画通り、培養上清中のTRAbを検出する方法を検討した。具体的にはバセドウ病患者4名の末梢血単核球をLymphoprep Tubeで回収し、無血清液体培養液X-VIVO10medium中で2x10^6cells/mlに調整し、PWMと共に7〜13日間培養し、上清を濃縮し、産生されたTRAbを2種類の第3世代TRAb測定法で測定した。K社測定法で2.1IU/L、R社測定法で25.8IU/Lと1名のバセドウ病患者においてTRAbが明らかに陽性(陰性は1IU/L未満)であった。本年度の研究により、少なくとも一部のバセドウ病患者では、末梢血リンパ球培養上清中のTRAbを高感度の第3世代TRAb測定法で検出できることが明らかになった。
|