我々はスギ花粉症が誘因となり、バセドウ病が発症したり増悪したりすることを報告してきた。スギ花粉症などのI型アレルギーではIL-4、IL-5などを分泌するTh2が活性化して、IgE産生や好酸球の活性化がおこることが知られている。これらのサイトカインはIgG産生も誘導するため、我々はスギ花粉症でおこるTh2の活性化により、バセドウ病の病因IgG抗体であるTSHレセプター抗体(TRAb)産生も誘導され、バセドウ病が発症・増悪するのではないかと推定している。これを証明するためには、スギ花粉症を合併したバセドウ病患者の末梢血リンパ球をスギ花粉で刺激することでTRAbの産生が見られることを確認する必要があるが、従来のTRAb測定法では測定感度の問題で証明できなかった。本年度はまず昨年度の結果の再現性を調べた。スギ花粉症を合併したバセドウ病患者の末梢血単核球をスギ花粉抗原で刺激し、培養上清中のTRAbを高感度第3世代TRAb測定法で測定したところ、6名中3名で検出できた。次に特異性の確認を行った。残念ながらスギ花粉症を合併したバセドウ病患者の末梢血単核球をスギ花粉抗原なしで培養した場合、またスギ花粉症を合併していないバセドウ病患者の末梢血単核球をスギ花粉抗原と共に培養した場合、共に上清中でTRAbが検出されたため、スギ花粉刺激がTRAb産生の誘因であることの証明は出来なかった。ただし本年度までの研究で確立した高感度TRAb測定法によるバセドウ病患者末梢血単核球培養上清中のTRAb検出法は、スギ花粉症以外の誘因とバセドウ病の発症・増悪との関連を検討する際にも役立つもの期待される。
|