研究概要 |
精度の高いがんの検査・診断のためには、標的となるがん抗原、遺伝子の同定が必要となる。このためには種々のがんに発現するが正常組織では精巣に限局しているがん・精巣抗原(CT抗原)が最も適している。われわれは予備的実験で、SEREX法を用いて胃癌抗原を解析し、GKAP1及びCCDC62を同定した。CCDC62には2種類のスプライスバリアントが報告されているが、遺伝子発現解析の結果、バリアント2(CCDC62-2)がCT抗原性を有していることが判明した。平成20年度はこのCCDC62-2の癌患者に対する免疫原性の解析の他、新たなCT抗原あるいはがん特異抗原の同定を行なった。 1.CCDC62-2の癌患者に対する免疫原性の解析 CCDC62-2組換えタンパク(バリアント1と異なるC-末端の319アミノ酸残基)を作製した。ELISA法及びウェスタンブロット法により、癌患者血清中の抗体の有無を解析した。健常人41名には全く抗体は認められなかったが、調べた191人の癌患者のうち13人(大腸癌:2/11、肺癌:5/76、胃癌:6/104)にCCDC62-2に対する抗体が認められた。CCDC62-2は癌患者に対して免疫原性を有していることがわかった。 2,SEREX解析 肺癌2例、卵巣癌1例についてcDNAライブラリーを作製し、それぞれ自己血清を用いたスクリーニングを行なった。肺癌では41個、卵巣癌では14個の陽性クローンを単離した。遺伝子配列の解析の結果、肺癌では28種類、卵巣癌では13種類の遺伝子が同定された。データベース解析の結果、これらの中に精巣特異的あるいはCT抗原性を有する遺伝子は含まれていなかった。しかし、肺癌からはNUP107が高頻度に単離され(41クローン中5クローン)、この遺伝子と肺癌との関連性が示唆された。
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