研究課題
アスピリンは世界で最も汎用されている抗血小板薬であるが、アスピリンを服用しているにもかかわらず心血管イベントを発症する患者がありアスピリン不応答性と呼ばれている。アスピリン不応答を判定するための検査法として、血小板活性化マーカーであるトロンボキサンA2の安定な代謝物、11-デヒドロトロンボキサンB2(11-dhT)B2)の尿中濃度を11-dhTXB2に対する特異抗体を用いてELISAで測定する方法の有用性を検討した。心血管イベントの二次予防のモデルとしてLDL受容体欠損マウスに12週齢から8週間高脂肪飼料を摂取させ、20週齢から高脂肪摂取とともにアスピリン(90-120μg/mouse/day)またはインドメタシン(18-24μg/mouse/day)を12週間投与するスケジュールで、尿中11-dhTXB2をELISAにより測定するとともに、血中コレステロールおよび中性脂肪、肝機能の指標であるAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)、MCP-1(Monocyte Chemotactic Proteir-1)を測定し、大動脈を展開して動脈硬化プラーク面積を測定した。尿中11-dhTXB2は高脂肪飼料摂取により増加したが、アスピリン投与群ではその増加を抑制する傾向が示され、インドメタシン投与群では有意に増加が抑制された。動脈プラーク面積はアスピリン群およびインドメタシン群で有意に抑制された。動脈硬化の炎症を反映する指標としての血中MCP-1濃度は、アスピリン、インドメタシンともに抑制傾向が見られた。肝硬変の患者において尿中アラキドン酸代謝物増加の報告があったため、肝臓に負担をかけるモデルとしてコール酸を1%加えた高脂肪飼料を与え、同様の項目を測定した。コール酸含有高脂肪飼料摂取群では11-dhTXB2が大幅に増加したが、アスピリン投与により増加抑制傾向が見られ、またAST濃度が有意に抑制され、動脈硬化プラーク面積の抑制傾向がみられた。以上の結果により、11-dhTB2特異抗体を用いたELISA法は適切に尿中11-dhTXB2を測定でき、アスピリン不応答を検出するための簡便な方法であることが示唆された。
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The Open Nutrition Journal
巻: (in press)
The Israel Medical Association Journal
Lupus
巻: 19 ページ: 379-384