【目的】本研究は猫ひっかき病(Cat Scratch Disease:CSD)の血清学的診断法の高感度Enzymeimmunoassay(EIA)法を確立することである。本法を確立するための最大課題は抗原に"如何なるBartonella henselae蛋白"を使用するかである。研究1年目(昨年度)はBartonella henselae ATCC株を使用して、3種類の抗原、すなわち1)未処理の菌体2)超音波処理菌体3)N-ラウリルーサルコシン液で処理した菌体で比較検討し、3)のサルコシン処理菌体が抗原として最も優れていることを明らかにした。研究2年目(本年度)はそのサルコシン処理菌体の処理沈殿物と上清液の違い、またB. henselae菌体の培養由来の違いついて、さらに検討を進めた。 【方法および結果】サルコシン処理後の沈殿物とその上清液中での比較では処理上清液の方に、より高純度の抗原成分が含まれていることが見出された。これはウエスタンブロット法でも確認された。また培養由来ではチョコレート寒天培地で培養したB.henselaeよりも液体培地で培養した菌体を用いた方が抗原として優れ、同じ菌体でも培養条件の相違により、抗原性が異なることが明らかとなった。そこで"液体培養由来のB. henselae菌体をサルコシン処理し、その上清液"を抗原としたEIA法を確立し、本法の有用性を検討した。CSD患者30例、健常人38例を使用して、B. henselae血清IgG抗体価を測定したところ、カットオフ値0.05とした場合、本法の感度は0.80、特異度0.92で本法のCSD診断の有用性が示唆された。 【結語】今後はサルコシン処理上清をさらに精製し、精製度を上げると同時に、IgM抗体価を組み合わることにより本法の抗体価測定の有用性は一層高まるものと期待される。
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