【目的】本研究は猫ひっかき病(Cat Scratch Disease : CSD)の血清学的診断法として、高感度Enzyme-Linked Immuno Sorbed Assay (ELISA)法を確立することである。研究3年目(最終年度)では本抗原の精製度を向上させるために抗原液精製における菌体含有N-ラウリル-サルコシン液中の比重を食塩添加により変化させ、その精製効果を検討した。 【方法および結果】B.henselaeATCC49882株菌体のサルコシン処理液中に食塩を0~8%の濃度になるように添加し、その処理・超遠心後の上清中の抗原性を比較した。その結果、食塩無添加液が最も優れ、食塩添加の比重差による抗原精製効果は認めなかった。食塩無添加によるサルコシン液で精製した抗原液の至適濃度でB.henselaeIgG抗体価測定用ELISA法を確立し、健常人80例およびCSD患者42例(IFA法:≧1:256倍)について測定した。その結果、カットオフ値を0.48とした場合、本法の感度0.952特異度0.987であり、本法の有用性が示唆された。IFA法との比較ではIFA法陽性42例中2例はELISA法陰性だったが、逆にIFA法陰性だったCSD疑い患者11例がELISA法で陽性と判定された。この11例中9例は猫や犬との濃厚接触歴があり、かつ局所リンパ節腫大と発熱を有し臨床的に強くCSDの疑われる症例であった。 【結語】今後IgM抗体価測定を組み合わせることにより本法の抗体価測定の有用性は一層高まるものと期待される。
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