1. 男性不妊症におけるY染色体の欠失解析法の研究 男性不妊症患者のY染色体の微少欠失の解析法については、Multiplex PCR法およびマイクロチップ電気泳動法を使用する、簡単で迅速な検査法について開発を進めている。今年度は、従来のMultiplex PCR法と、血液直接PCR法を用いたDNA増幅法を使用し、アガロース電気泳動法および2種類のマイクロチップ電気泳動装置を利用した解析法の比較検討を行なった。その結果、従来のMultiplex PCR法だけでなく、DNAの抽出操作を省略できる血液直接PCR法を使用しても、2種類のマイクロチップ電気泳動装置を用いて迅速に解析でき、Y染色体欠失解析への臨床応用が期待できた。 2. Y染色体に関する遺伝的背景の研究 これまでの海外で行われた研究から、Y染色体の長腕に存在する無精子症候補領域AZF(azoospermia factor)cの部分欠失gr/gr欠失は男性不妊と関連すると報告されている。そこで、本研究では日本人においてもgr/gr欠失と男性不妊との間に関連性がみられるのか解析することを目的とした。また、gr/gr欠失とY染色体ハプログループの関連性についても解析を行った。その結果、gr/gr欠失の検体に男性不妊が多い傾向が見られたものの有意な関連性は認められなかった。また、gr/gr欠失の検体は全てY染色体ハプログループD+Eに、gr/gr欠失無しの検体は全てハプログループ0に属していることが明らかになった。従ってgr/gr欠失は遺伝子多型であることが示唆された。
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