動脈硬化巣の形成には変性リポ蛋白とそれを貪食して泡沫細胞、プラークを形成するマクロファージが重要で中心的な役割を果たす。しかし、急性冠症候群の発症など動脈硬化プラークの破綻は必ずしもこの延長線上にあるものではなく、別の因子に負うものが大きいと考えられる。我々はこの動脈壁の破綻を強力、かつ、直接的に引き起こす因子の一つに好中球の浸潤があると考え、これを切り口として組織学的に検討した。我々は病理組織学的に好中球が動脈硬化巣の破綻に如何に関与するか検討するため、不十分な症例数であるが頸動脈内膜切除組織検体を収集した。 1)収集した検体(ホルマリン固定)を用いて、生体でNADPHオキシダーゼなどにより産生された酸化ストレスをスライド上の個々の細胞の上で評価するシステムを開発できた。これによりどの細胞が酸化ストレスに直接関与するか観察できた。2)同病理標本を用いて、浸潤する好中球やマクロファージを細胞の特異なマーカーを用いて染色し、両細胞の染色性や存在部位の特徴を検討した。また、開発した酸化ストレスとの関係を細胞レベルで解析した。3)好中球の酸化ストレスに及ぼす効果をin vitroで確認する予定であったが、1)2)に時間を要したため遂行できなかった。 これら結果より成果として、(1)不安定プラークとされる部分に、多くの好中球が浸潤していること、(2)好中球は新生された毛細血管を介してプラーク部位に浸潤しているようであり、(3)そのような好中球は従来好中球に特徴的であるナフトールASD染色には染まらないことや、(4)fPRL1分子が細胞質から著明に減少していることが判明した。(5)この様な好中球は酸化ストレス源の一部と一致していることより、女子中球は強い酸化ストレス源になっている可能性が示唆された。
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