ケトアミンオキシダーゼ(KAOD)は、441個のアミノ酸から構成される分子量約50kDaの酸性タンパク質であり、フラビンを補酵素として、グリコアルブミン由来の糖化アミノ酸から糖を分離する反応を触媒する。本研究の目的は、KAODの安定性の向上である。タンパク質の安定化の方策の1つとして、新規SS結合の導入がある。これは、Cys残基の側鎖間の共有結合(以下、SS結合)を形成させることによって、タンパク質の変性状態の自由度を制限し、不安定化するというものである。つまり、変性状態と未変性状態の自由エネルギー差を広げて、相対的にタンパク質を安定化する手法である。まず、KAODと相同性の高い、フルクトアミンオキシダーゼ(FAOD)のX線結晶構造をもとにホモロジーモデリングを行い、得られたKAODの立体構造モデル上でデザインを行った。モデルよりKAODは、8つの遊離のCys残基を持っていることが予想される。このうち、補酵素であるフラビンの結合部位付近に存在するCys残基を除いた、5つのCys残基近接のアミノ酸残基を選択し、F172C、T345C、R348C、T353C、Y354C、D425Cの6種類のKAOD変異体をデザインした。いずれも昨年度の報告と同様の方法(ベクターpET22b、大腸菌BL2 1)にて発現、精製した。6つの変異体の安定性は、中性条件下での加熱処理(pH7.5、40℃)に対する残存量を測定することで評価した。その結果、作製した変異体の安定性は、標品のKAOD Nativeと同程度か、それに及ばず、顕著な安定性の向上は見られなかった。この実験と並行して、KAODの結晶化を行っているが質の良い、大きな結晶化の条件は見つからなかった。
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