ATL発症に関する危険因子リストに挙げられた感染関連分子(Tax、HBZ、TSLC1等)の異常と発症リスクとの相関について解析を行っている。臨床検体におけるこれらの分子の動態を検討することで、危険因子としての応用精度を上げ、臨床検査の一環として発症危険群のスクリーニングが実施できるシステムの構築が期待された。そのために、以下のような解析を計画した。 (1)当研究室におけるHTLV-1キャリアに関する長期間のコホート研究でのキャリア検体(血清、血漿、細胞)および、日常診療で見出される患者検体に対して、感染関連分子の発現(RNA、蛋白)変動について検討する。 (2)臨床検体(コホートおよびキャリア)由来Tリンパ球の培養系を確立し、培養T細胞のHTLV-1感染細胞関連分子の発現や活性化制御についての分子生物学的、細胞生物学的手法による検討を行う。 実際には臨床検体のHTLV-1感染細胞関連分子のうち、HBZとTSLC1について、(a)mRNA発現(血清・細胞)、(b)蛋白発現(血清・細胞)、(c)各分子に対する血清中抗体の検出などを検討した。臨床検体はコホート検体、インフォームドコンセントを得た患者(HTLV-1キャリア)および対照として年齢と性別を一致させた健常人ボランティアの血清を用いた。患者血清や感染細胞の抽出物を作成し、それぞれリアルタイムPCRやイムノブロット、免疫沈降法を用いて、各分子のmRNAやタンパクの発現変動や相互作用を測定した。(HTLV-1プロウイルス定量、クローナリティー解析等も併せて実施した。)今後、解析検体数を増やし、発症リスクとの相関を評価できるように解析を進めていく。Tリンパ球の培養系を確立については臨床検体(コホートおよびキャリア)由来保存サンプルなど利用し、培養条件の設定などの検討を行った。
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