研究概要 |
【目的】心血管疾患の有効な予防ならびに治療法の確立は緊急を要する課題である。最近、本疾患の新しいリスクファクターとして、NOS拮抗阻害剤である内因性N^G,N^G-dimethylarginine(asymmetric dimethylarginine: ADMA)が同定され、注目されている。本研究においては、ADMAの代謝機構(産生系ならびに分解系を含む)を明らかにして、血漿ADMAがどのように調節されているかを解明することである。初年度に計画したADMA代謝の担当細胞の特定および血液細胞におけるADMA含有タンパク質の精製と同定に関する研究成果を得たので報告する。【方法および結果】ラット血液から赤血球,白血球,血小板の各画分を得て,RT-PCRおよびWestern blottingにてADMA代謝酵素群[加水分解酵素,DDAH1/DDAH2;タンパク質のADMA化,PRMT1]の発現について検討した.すべての細胞画分においてPRMT1およびDDAH1のmRNA,ならびにタンパク質発現が認められたが,DDAH2については確認されなかった,DDAH活性の結果から血中におけるADMA代謝の中心となる組織は赤血球であることが示唆された.そこで,タンパク質結合型ADMAに特異的な抗体(ASYM24)を用いたWestern blottingによって赤血球中に存在するADMAを含むタンパク質(遊離型ADMAの給源となる)の検索を行ない,最終的にLC/MS/MS分析によって,catalaseが同定された.以上の結果から,赤血球においてはADMAの産生・分解系を含む代謝系が活発に働いていることが明らかとなり,本細胞が血中のADMAレベルを調節しうることが示唆された.また,翻訳後修飾によるADMA化のターゲットタンパク質がcatalaseであるとの興味ある新知見が得られた。
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