研究概要 |
IMA(ischemia-modified albumin)は、体内の虚血状態において、アルブミンのN末端アミノ酸8個に変性をきたした蛋白である。アルブミンの虚血状態におけるIMAへの変性は不可逆的なため、ちょうど血糖値におけるグリコアルブミンの如く、IMAが長期における虚血マーカーとして応用できる可能性を我々は想定した。睡眠時無呼吸症候群(OSAS)では、睡眠中は動脈血中酸素濃度が低下するためIMA高値が予想され、有効性が証明されている経鼻持続陽圧呼吸(nCPAP)等の治療が奏功すれば、IMAも下がる可能性がある。そこで我々はOSAS患者10名でのIMA濃度を健常者20名と比較し、倫理委員会の承認と患者のインフォームド・コンセントを得た上で治療の前後で比較を行った。その結果、nCPAPにより、患者群の動脈血酸素飽和度spO2は、睡眠中の最低値が79.0±7.5から90.0±5.6%と有意に改善した(p=0.027)。一方、IMA値は健常人で0.690±0.079AUであったのに対し、患者群では治療前で0.649±0.102AUと有意差はみられず、治療後も0.643±0.104AUと変化は見られなかった。またOSAS患者のbody mass indexやHDLコレステロール濃度は、治療前後で有意な変化を認めなかった。しかし本検討と同じ患者・健常者群において、抗動脈硬化指標であるparaoxonase 1(PON1)活性が、arylesteraseを指標にすると患者群で低下しており、治療に伴い上昇することが見いだされ、報告した。(Kotani K, Kimura S, et al : Clin Chim Acta.2008 Sep ; 395 (1-2) : 184-5.)。今回の検討では被験者数が少なく観察回数も充分ではないため、再度被験者数を増やして検討を重ねている。
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