研究課題/領域番号 |
20590585
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
木村 聡 昭和大学, 医学部, 准教授 (30255765)
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キーワード | parapxonase-1 / IMA / 虚血変性アルブミン / 脳血管障害 / 慢性腎不全 |
研究概要 |
IMA(ischemia-modified albumin)は、体内の虚血状態において、アルブミンのN末端アミノ酸に非可逆的な構造的変性をきたしたアルブミンである。アルブミンの血中半減期は1週間程度のため、ちょうど血糖値におけるグリコアルブミンの如く、IMAが過去1週間における低酸素マーカーとして応用できる可能性がある。そこで申請者は、患者の同意を得て気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患、睡眠時無呼吸症候群などさまざまな疾患患者でIMAの変動を測定したが、明確な臨床的有用性のevidenceを得るには至らなかった。 このため組織虚血をもたらす動脈硬化疾患のマーカーparapxonase-1(PON1)に着目、その測定法を開発し、有用性や生活改善に伴う変化を検討した。平成23年度は、動脈硬化が進む代表的疾患である慢性腎不全に着目、IMAとPON1活性の変動と透析に伴う改善効果を検討、臨床的有用性を示唆する知見を得た。平成24年度は脳血管障害にも範囲を拡げ、虚血と出血、さらにカテーテル治療の前後での値を検討する予定である。IMAもPON1も、単純な比色法で測定できるため、コストは安価であり、生化学自動分析機への搭載も視野に入る。また迅速に結果が得られるため、臨床現場で頻回に測定し、病勢に応じた治療法開発に結びつく可能性がある。組織虚血の評価指標として、IMAとPON1の臨床的有用性を確立するのが本研究の眼目である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた慢性閉塞性肺疾患におけるIMAの応用には、現時点で画期的なデータは得られていない。しかし慢性腎不全、脳血管障害を拡げ、より幅広い病態での組織虚血、低酸素血症に注目すると、有用性を示唆するデータが得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
単に特定の病態と健常人との値を比較するだけではなく、病勢、重症度、治療における値の変動を追跡する。これにより、IMAやPON1の値の高低や変動速度が、病態の診断のみならず、病勢の評価、ひいては予後の予測指標となることを証明する。比色法という低コストの検査方法ゆえ、臨床現場への還元するための敷居は低いと思われる。
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