エンドトキシンによる有機アニオン輸送能の変化を検討するため、エンドトキシン血症モデルラットを用い、基質であるパラアミノ馬尿酸(PAH)の尿細管分泌クリアランスの経時的な変化について観察した。さらにOat1およびOat3のmRNA発現量を測定し、その発現量との関係について検討した。エンドトキシン血症モデルラットにおいてBUNが腎機能の指標であるGFRとの相関性が認められたが、血漿中シスタチンC濃度は腎障害を反映しないことが示唆された。PAHの尿細管分泌クリアランスはエンドトキシン投与24~72時間後において低下するものの、72時間後には回復することが明らかとなった。また、Oat1およびOat3のmRNA発現量は24時間後では減少し、48~72時間後では正常値まで回復すること明らかとなった。以上より、エンドトキシン血症時におけるPAHの尿細管分泌の低下にはOat1およびOat3のmRNA発現量の減少関与することが示唆された。また、PAHの尿細管分泌の低下およびmRNAの減少は一過性であり、時間依存的に回復することが明らかとなった。 エンドトキシン感受性マウス(C3H/HeN)および抵抗性マウス((C3H/HeJ)を用いて、エンドトキシン投与6~24時間後の腎機能、OatlおよびOat3の蛋白発現量、基質であるセファゾリンを用いて常法腎排泄動態を検討した。エンドトキシン処理および非処理C3H/HeJマウスにおいては、いずれのパラメーターにも変化が認められなかった。一方、エンドトキシンで処理したC3H/HeNマウスではセファゾリンの血漿中タンパク結合率の低下、非結合型セファゾリンの尿細管分泌クリアランスの低下が観察された。OatlおよびOat3の発現量に及ぼすエンドトキシンの影響については、現在測定中であるが、ラットにおける結果を考慮すると、TNF-αをはじめとするサイトカインがOatlおよびOat3の発現に関与していることが示唆された。 これらの結果はエンドトキシン血症においてOatlおよびOat3を介して輸送される薬物の体内動態の変化を予測するために有用な情報であると考える。
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