我々が作成したモノクローナル抗体を用いる尿中MBT濃度を測定するELISA系はほぼ完成型であるが、血漿中にはこの反応系に干渉する物質が含有されていて、通常の方法では正確な測定ができない。そこで、C_<18>ODS逆相前処理カラムでMBT分画を濃縮抽出して測定する系を確立し、実験に用いた。 自然発症高血圧ラットにおける食塩代謝と高血圧との関連を検討する目的で、MBTの動態を調べた。その結果、SHRに食塩負荷すると血圧上昇とともに尿中MBT排泄量は増加したことから、食塩の代謝と同時に血圧上昇にもMBTが関与する可能性が示唆された。このような反応におけるレニン-アンジオテンシン系の関与を検討する目的で、AT-1受容体拮抗薬のテルミサルタンを投与して、投与4週間後の血圧差が30mmHg程度になるほど降圧させた。対照食塩負荷群ではMBT尿中排泄は著明に増加するが、食塩負荷テルミサルタン群では増加が抑制され、MBT血中濃度も有意に減少していた。そこで、この現象をより明確に証明する目的で、細胞培養系で検討した。副腎皮質由来細胞株であるY-1細胞にテルミサルタンを添加した培養上清中のMBT濃度では影響が見られなかったが、副腎髄質由来細胞株であるPC-12細胞培養系では、アンジオテンシンIIの添加で濃度依存的に培養上清中MBT濃度が上昇した。それぞれの実験系の逆条件での再検を実施中であるが、MBTの由来は副腎皮質だけでなく髄質でもある可能性を別の系で指摘しており、更なる検討を予定している。
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