内因性ジギタリスとして、今年度にはmarinobufotoxin(MBT)に加えてtelocinobufotoxin(TCT)を標的にして研究してきた。また、ウアバインの中枢神経系での役割が再び脚光を浴びており、その産生部位の特定についても検討した。その結果は、次の通りである。 (1)Bufadienolideは、副腎皮質で産生されるというのが定説であるが、ジギタリスは神経系に存在するというのが私の持論であり、それを証明するために抗体を用いた免疫組織化学で脳内の局在を検討したが、うまく染色できなかった。そこで、発生学的に神経由来である副腎髄質由来細胞株のPC-12細胞でMBTの産生を無血清培地で検討し、時間依存的に、培養上清中にMBTが増量することを明らかにした。(2)健常人血清を用いて、その中にTCTが存在する可能性をHPLC/質量分析系にて解析し、蛙から精製したTCTと同じ質量シグナルを有する物質が血清中に存在することを明らかにした。(3)視床下部の室傍核の神経細胞由来と考えられるN-1細胞株を用いて、無血清培地で検討すると時間依存的に培養上清中にウアバインが増加し、アルドステロンを添加すると用量依存的にその増加が促進された。そこで、鉱質コルチコイド受容体遮断薬のエプレレノンを前もって添加するとアルドステロンによるウアバインの増加反応が遮断された。したがって、室傍核では、ウアバインを産生しており、アルドステロンが分泌刺激作用を有することが明らかになった。
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