骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes ; MDS)は血球形態異常がその特徴であるが、形態異常をもたらす分子メカニズムは不明である。一方新薬レナリドマイドは染色体5q欠失のあるMDSに特異的に効果を発揮して異常クローンの増殖を阻害することから、形態異常を有する細胞の分子基盤の解明に役立つ可能性がある。本研究では応募者が独自に樹立した5q欠失を有するMDS由来細胞株MDS-Lを用いて、レナリドマイドで処理した際の細胞学的・分子生物学的変化を検討した。昨年度の研究で、MDS-L細胞はレナリドマイド処理によって細胞質分裂(cytokinesis)が阻害されること、さらにマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現の解析において、レナリドマイド処理によって発現が著明に低下した遺伝子の中で、5q領域に存在する遺伝子であるKIF20Aに着目した。そこで今年度は正常血液細胞(CD34陽性分画、好中球、リンパ球、単球)におけるKIF20Aの発現様式、他の細胞株を用いて分化誘導過程における発現動態、さらにレンチウィルス法によりKIF20Aのノックアウト変異株を作成して、その細胞動態の検討を開始した。これまでに得られた検討から、KIF20Aは比較的幼若な段階で発現することや、血液細胞の分化あるいは活性化の段階で重要な役割をもっている可能性、さらに細胞の基本形態維持にも関わる可能性が考えられた。血液細胞におけるKIF20Aの機能について、さらに継続的して検討中である。
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