研究概要 |
現在まで、血液を用いたアルツハイマー病の病期の客観的診断法は確立されておらず、専らMMSE(Mini Mental State Examination)をはじめ面接、核医学的画像診断、同居者による日常生活の観察に依るところが大きく、より客観的診断法の必要性が望まれている。そこで我々は、軽度および重度アルツハイマー病患者血清中に検出されるA-beta40蛋白の熱処理による凝集性の相違に着目し、その臨床診断への応用を検討した。本法における基礎データとして、合成ペプチドA-beta40を試料とした検討では、A-beta9-14およびA-beta17-21に相当するペプチド部位が38度~39度での加温前後で凝集性に著しい相違が認められることが判明した。実際の患者血清を用いた結果では、軽度アルツハイマー病患者由来の血清中A-beta40は重度患者由来のA-beta40に比較し38度での凝集性変化が乏しく、プロテアーゼKに対する抵抗性が強い。このことは、重度患者ではA-beta40蛋白は、より強固な凝集物としてすでに存在しているため、加温にて、更なる凝集性の変化が起こらないことを示唆している。これらの研究結果より、実際のアルツハイマー病患者の客観的な病期判定が可能である。また、合成A-beta40の加温誘導凝集に関与するA-beta40内の部位は、加温似て変化するペプチド部位と同一であり、この凝集性は、A-beta40内の8残基より構成される、所謂ベータシートブレーカーペプチドであるA-beta16-23,17-24が凝集阻止に有効であり、アイロイドベータ蛋白の凝集阻止法の新たな開発に繋がる研究成果である。
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