今年度は、異なる病期にあるアルツハイマー病患者の各病期の臨床例を増やし、患者血清中のアミロイドベータ蛋白の温度依存的構造変化の相違が、病期診断に有用であることを特異抗体を用いたELIZA法にて、確認した。また、既に蛋白レベルで所謂8残基ブレーカーペプチドによるアミロイドベータ凝集抑制効果を確認しているが、この効果を実際に動物実験にて確認するために、ラット脳内にアミロイドベータを注入する実験系を作成し、迷路による行動実験にて、ブレーカーペプチドの凝集抑制および、異常行動抑制に対する効果を確認した。然しながら、ファージミドを用いた抗体作成系にて、未だアミロイドベータ40のアミノ酸残基20~40間を特異的に認識するモノクローナル抗体の作成には至っていない。今後も引き続き作成を試みる予定である。また、温度依存的アミロイドベータ蛋白の構造変化をCircular Dichroisumにて検討したが、36~42℃の生理的温度変化の範囲では差異が認められず、温度による構造変化は、ベータシート構造をきたす変化ではなく、アミロイドベータ同士が互いに会合することによることがELISAにての特異抗体との反応性の変化をきたしていると考えられた。また、この会合には、アミロイドベータ40蛋白のアミノ酸残基15~18が最も関与していることが確認でき、同時にこれらのペプチドフラグメント部位に8残基ブレーカーペプチドが結合することで、アミロイドベータ40同志の会合を阻止可能であることを確認した。
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