新しい腫瘍マーカーとして大きな期待が寄せられているヒト上皮細胞抗原MK-1について、その癌の診断と治療における有用性について調べるもので、平成20年度は、以下の点を検討した。 まず、マウス抗MK-1抗体による癌細胞の分離同定法の確立を試みた。MK-1は、それに対する抗体を利用することにより、磁性粒子を用いた血中および便中の剥離がん細胞分離に利用可能である。MK-1に対して本研究室で作製したモノクローナル抗体M1-8とM6-35のin vitroでの大量調製法を検討した。その結果、CELLine^<TM>フラスコを用いた培養法により100mgスケールの抗体を調製する方法を開発した。次に、本研究室で作製したヒト抗MK-1モノクローナル抗体M13-13とM13-57およびM11-29のex vivoでの抗腫瘍効果を、MK-1発現癌細胞であるヒト胃癌細胞株MKN-45を標的として検討した。その結果、抗体とヒト補体やヒトNK-LAK細胞との組み合わせによる抗腫瘍効果を示した。さらに、ヒト型抗MK-1抗体の遺伝子療法における有用性を検討した。ヒト抗MK-1モノクローナル抗体遺伝子を単離し、単鎖抗体を作製して性状を解析した。抗体M13-13ないしM11-29のハイブリドーマより、ヒト抗体のH鎖およびL鎖のV領域を挟むプライマーを用いて、ヒト抗体V領域遺伝子を単離した。単離したH鎖およびL鎖のV領域遺伝子をリンカーで挟んで結合し、単鎖抗体遺伝子を作製し、マウスのSp2/0ミエローマ細胞に発現させて精製した。作製した単鎖抗体(ヒト抗MK-1scFv)のMK-1産生癌細胞との反応性を解析し、その遺伝子がMK-1産生癌に特異的な遺伝子治療に有用であることを示唆した。
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