研究課題
新しい腫瘍マーカーであるヒト上皮細胞抗原MK-1について、癌の診断と治療における有用性について調べるもので、平成22年度は以下の点を検討した。まず、確立したMK-1測定用のELISAを利用し、癌患者と正常人血清中のMK-1を測定した。正常人30例ではすべて検出感度(2ng/ml)未満であった。種々の癌患者血清では100例中10例が陽性(2ng/ml以上)で、最高例は75ng/mlであった。主な内訳は、膵臓癌10例中1例(10%)、子宮頚癌7例中1例(14%)、大腸癌23例中2例(8%)、乳癌17例中2例(11%)が陽性を示した。本研究では健常者のMK-1血清濃度は非常に低いことと、癌患者での血清MK-1陽性率は他のマーカーに比べ低い結果が得られた。しかし血清中に高値を示す例があり、MK-1を標的とする画像診断や免疫療法時に留意する必要が示唆された。つづいて、ヒト型抗MK-1抗体の免疫療法における有用性を検討した。具体的には、ヒト抗MK-1モノクローナル抗体(抗体M13-57)を産生するハイブリドーマ細胞よりヒト抗体のH鎖およびL鎖のV領域を挟むプライマーを用いてH鎖およびL鎖のV領域遺伝子を単離した。次いで、単離したH鎖およびL鎖のV領域遺伝子をリンカーで挟んで結合し、単鎖抗体(scFv)遺伝子を作製するとともに、IL-2との融合タンパクの作製を試みた。これを酵母発現ベクターであるpPICZαに組み込み、酵母の一種であるピキア・パストリスに発現させたところ、従来の大腸菌に比べて容易に精製できた。この融合タンパクは腫瘍細胞に対するNK-LAK細胞活性をインビボでもインビトロでもMK-1特異的にターゲットした。この低免疫原性でより優れた組織透過性を持つ融合タンパクを用いることにより、NK-LAK細胞をMK-1産生腫瘍特異的に作用させることが期待された。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)
International Journal of Cancer
巻: 127 ページ: 2707-2717
Cancer Science
巻: 101 ページ: 2351-2360
Anticancer Research
巻: 30 ページ: 3107-3112