東京都老人総合研究所の倫理委員会承認(受付番号35)およびNTT東日本関東病院の倫理・医療監査委員会承認(受付番号07-21)に基づき、平成20年度は10症例の軽度認知障害(MCI)患者髄液サンプルについて分析を行った。また、比較のために東京都老人医療センターの剖検髄液サンプルを使用した(倫理委員会承認:受付番号24)。血清サンプルは、健常ボランティアから同意を得て採取したものを使用した。 髄液中のタンパク質の酸化修飾については、システイン残基の架橋形成、チロシン残基のニトロ化、およびカルボニル化について分析を行った。システイン残基の架橋形成の分析には、我々が独自に開発した蛍光色素による2段階標識法を用いた。ニトロ化タンパク質の分析には抗体によるウィスタンブロット法を用いた。カルボニル化タンパク質についても一般には抗体による方法が用いられているが、我々は蛍光ヒドラジド標識による検出を試みた。 その結果、カルボニル化タンパク質においてサンプル間で大きな差異が見られ、認知症患者の剖検髄液サンプルとも相関性を示唆するデータが得られた。 髄液中で最も高くカルボニル化されているタンパク質スポットは血清アルブミンおよび免疫グロブリン軽鎖であることが判明したので、これらを除いて同様の分析を行った結果、分子量約1万4千の低分子量タンパク質のカルボニル化において、サンプル間で大きな差異が認められた。また酸性等電点成分のカルボニル化は、認知症患者の剖検髄液でも高値を示す一方で、健常者の血清中では非常に低いことがわかった。
|