研究課題
アルツハイマー病(AD)および軽度認知症患者髄液のプロテオーム解析を実施。Cy5-ヒドラジドを用いた蛍光標識法による定量的プロテオーム解析を行なった結果、分子量約14,000、等電点が5.5付近の複数のスポットがカルボニル化を受けていることがわかり、さらに患者ごとに大きく変動することを見いだしそのスポットを切り出してゲル内消化を行い、質量分析による同定を試みた結果、トランスサイレチン(TTR)であることがわかった。TTRはそれ自体がアミロイド病の原因となる一方でAβとの結合性を有し、Aβのオリゴマー形成を阻害することによりADの発症に抑制的に働いている可能性が示唆されており、脳脊髄液中のTTRの酸化レベルは、Aβの重合阻害を介してADの発症および進行速度に影響を及ぼしているものと考え研究を行った。Aβとの結合部位に近いメチオニン残基に対し、質量分析計を用いてメチオニンの酸化レベルを定量的する技術を開発し、AD患者髄液のTTRの分析に応用した。メチオニンの酸化は、サンプル調製の過程で起きる人為的反応であるとされていたが、髄液検体の保存方法および分析の操作を最適化することで、生体内のレドックス状態を反映する値を得る技術を確立し、ADおよび軽度認知症患者髄液中では、TTRのメチオニンの酸化レベルが上昇していることを明らかにした。さらに、試験管内で行ったAβ1-40の会合実験で、メチオニン酸化TTRでは、Aβ1-40の会合を阻害する能力が低下していることを示唆する結果を得ている。髄液中のTTRのメチオニン酸化レベルと認知症の症状の進行速度の関係については、現在患者の経過を追跡中であり、まだ明確なデータが得られていないが、今後されに長期にわたって経過観察を継続、ADの症状の進行と髄液中TTRのメチオニン酸化との相関性を明らかにし、新たなバイオマーカーの開発につなげる予定である。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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