研究概要 |
対象コホートの追跡も5年を超え、追跡研究が可能と成ったと思われたので、まず、臨床データと死亡との関連を追跡研究で調べ、血漿レニン活性高値が死亡の危険因子となっているという知見を得た。一般住民での解析としてはフラミンガム研究の報告しかなく、重要な知見と思われた。また、追跡コホートが整い、遺伝因子を含めた解析に着手している。以下に、上記の結果を概説する。 【目的】レニンアンギオテンシンシステム(RAS)は組織レベルでも働いており、血管造成、細胞増殖、炎症、活性酸素産生等に関与し、大血管障害(CVD)、癌、糖尿病、等の種々疾患と関連すると考えられる。RASのマーカー、血漿レニンの活性(PRA)高値はCVDの危険因子と報告されているが、全死亡との関連は白人での報告(フラミンガム研究)のみである。私達は、全死亡とPRAとの関連を検討した。[方法]山形県高畠町住民検診の2004-2006年参加者の内、協力の同意を得られた3,502人(年齢:62.5±10.4)、が対象。死亡及び死因を、2010年末まで追跡調査した(追跡中央値:2,280日、143名が死亡)。PRAと死亡(全、CVD、及び、癌)との関連を、連蔵変数、及び、群別(4分位PRA;<U><</U>0.4,0.5-0.9,1.0-1.9及び<U>></U>2.0ng/ml/hr)で解析。[結果]PRAと関連する種々の因子(年齢,性別,体重,拡張期血圧,HDL-c,尿酸,BNP,血清蛋白,高血圧治療及び糖尿病)で補正したCox's比例ハザード法では、PRA高値は全死亡の有意な危険因子であった(log10×PRA(ng/ml/hr)値1増加:ハザード比(HR)2.12,95%CI:1.47-3.06);4分位最高群(High)vsその他(Low):1.97,1.37-2.83)。疾患別では、High群はLow群に比して、CVD(1.38vs0.41%,p=0.002)及び癌(2.13vs1.18%,0.047)の死亡率が有意に高かった。上述因子での補正ロジスティック解析では、High群はLow群に比して、CVD(オッズ比:4.11,p=0.003)の死亡率が有意に高かったが、癌死亡率は有意ではなかった(1.53,0.195)。[結論]PRA高値は全死亡の独立した危険因子である。
|