Moyamoya病患者と対照者集団の収集を日本、韓国、中国を含む東アジアとヨーロッパ諸国において本年度も継続して行った。その結果、現在までに東アジアにおいて家系例患者については日本41家系、韓国1家系、さらに日中韓合計で209名の孤発例患者および757名の健常者に参加いただいた。ヨーロッパ諸国においてはチェコの1家系および7名の孤発例患者、ドイツの42名の孤発例患者および384名の健常者に参加いただいた。 常染色体優性家系を用いた連鎖解析によって17q25.3に連鎖することを昨年度報告している。Positional cloningによりRaptor遺伝子上に存在する新規SNP (ss161110142)のマイナーアリルが家族性Moyamoya病に共通することを明らかにした。ss161110142のマイナーアリルは、東アジアでもMoyamoya病患者と高い相関が認められたが、ヨーロッパでは患者群でも対照群でも認められなかった。そこでRaptor遺伝子の近傍にMoyamoya病の原因となる他の変異が存在する可能性を考慮して、Raptor遺伝子の周辺約150kbpの領域に対して、日本人Moyamoya病患者から樹立した不死化末梢リンパ球を用いてBACクローンの作成を行った。 家系の分析では、Moyamoya病のみならず、片側Moyamoya病や内頚動脈終末部狭窄・閉塞の患者もこのリスクアリルを有しており、一連の狭窄病変についても関与が推定される。さらに浸透率が低いことから、遺伝子以外の関与についても想定される。
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