研究課題
本年度は、分子診断法開発の早期フェーズである遺伝子スクリーニングの研究デザインにおいて、いくつかの重要な成果を得ることができた。前年度に開発した関連の強い遺伝子のランキングを行う場合の必要症例数の設計法をノンパラメトリック検定を行う場合に拡張した。これにより、データが正規分布に従わない場合にも適用できる頑健な必要症例数の設計が可能となった。関連遺伝子のスクリーニングでの偽陽性の指標として偽発見割合(false discovery proportion)に基づく必要症例数設計法を新たに提案した。これは、遺伝子間の相関によって生じる偽発見割合のばらつきと関連遺伝子の選択割合である感度のばらつきを同時にコントロールする方法である。数値実験により、偽発見割合の期待値である偽発見率(false discovery rate)と感度の期待値をコントロールする従来法よりも、特に、遺伝子間の相関が高い場合には優れた方法であることが示された。前年度に提案したベイズ流階層混合モデルに基づく統計解析の枠組みを具現化するために、関連遺伝子の効果サイズの分布にノンパラメトリック事前分布を仮定した経験ベイズ法を開発した。この方法は、いくつかの従来法に比べて、個々の遺伝子に対する効果サイズの推定、効果サイズに基づく遺伝子のランキング、関連遺伝子のサブセットを用いた期待予測能の推定がより正確に行えることを、数値実験、並びに、いくつかの実データへの適用により確認された。がんの個体差の検出のためのモデルに基づくクラスター分析法を新たに開発し、数値実験によりその基本的性能を確認した。分子診断法を用いて対象の限定や層別を行う治療法開発のための臨床試験のデザインについて、先行研究と実際の適用例のレビュー、並びに、上記の研究成果を踏まえ、いくつかの新たな研究課題を同定した。
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