研究課題
(平成21年度分)ドミニカ共和国(ド国)サント・ドミンゴ市の小・中学生を対象に、文書で説明し両親と児童・生徒の双方から同意が得られた200名の対象者に対して健康調査を実施した。ド国で得られた血清サンプルは、本邦に輸送し、ヘリコバクタ・ピロリ(H.pylori)抗体、血清ペプシノゲンI、II値、血清ガストリン値を測定した。これらの測定結果とアンケート調査票のデータを前年度収集したデータを加え、分析を行った。アンケート調査票(対象者の属性(調査地域、性、年齢)、対象者の生活習慣(食習慣、食生活など)、生活環境、上部消化管疾患既往歴、及びそれら疾患に関係する自覚症状の有無など)とH.pylori感染及び慢性萎縮性胃炎(CAG)との関連について疫学的検討を行い、次のような結果を得た。ド国の若年者(15歳未満)のH.pylori感染率は、男性では、0~5歳、15.4%、5~10歳、27.8%、10~15歳、37.7%であり(N.S.)、女性では、それぞれ13.6%、25.1%、及び46.0%であった(p<0.001)。また、ド国小児のCAG有病率は、男性では、0~5歳、7.7%、5~10歳、11.8%、10~15歳、9.9%であり(N.S.)、女性では、それぞれ13.6%、13.1%、及び17.6%であった(N.S.)。本研究のドミニカ共和国における0~15(2~15)歳の小児のH.pylori感染率は、男性、31.8(31.7)%、女性、30.5(29.7)%(M.S.)であり、報告者らが2001~2002年にドミニカ共和国サント・ドミンゴ市及びサンペドロ・マコリス市の両地域で実施した調査(15~19歳)によるH.pylori感染率が、男性が50%、女性が45%であったことと比較すると、かなり低い感染率であった。H.pylori感染率が、1~2歳未満の幼少期に成立することを考えると、今後10数年後の同国の15~19歳のH.pylori感染率は、大きく低下すると思われる。一方、小児期のH.pylori感染は、世帯人数や経済状況に関連しているとの報告がなされているが、報告者らが実施したドミニカ共和国の小児の調査においては、ロジスティック回帰分析の結果、H.pylori感染に年齢および世帯人数が関係している示唆が得られたが、冷蔵庫、テレビ、コンピュータなどの保有の有無、及び消化器疾患関連自覚症状の有無の各因子は、H.pylori感染と関連は認められなかった。今後、さらにこれらの収集データを詳細に検討し、H.pylri感染やCAGに関与する因子(食生活、食習慣を含めた生活習慣及び生活環境など)を明らかにするとともに、H.pylori感染からCAGや胃がんへ進展に関与すると考えられているH.pylori菌の病原性(Cag Aの有無)についても検討を行う予定である。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Journal of Physical Fitness, Nutrition and Immunology 19
ページ: 8-16