研究概要 |
これまでの研究で、鉱物油をマウスに投与した場合、ヒトSLEと同様にCD3ζが低下することがわかった。さらにそれは腹腔内の炎症の程度に関係するとともに、生体内のアルジニンの濃度にも関係しており、アルジニンが低下すると自己抗体が誘導された。これはヒト自己免疫疾患でも見られる現象である。 そこで今年度はまず、アルジニンがCD3ζ低下に関係しているか検証するために、CD3ζの低下した細胞にアルジニンを添加してその変化を検討した。果たしてCD3ζは回復することがわかった。 そこで、CD3ζの減少がどのようにして起こるか検討するために、CD3ζのmRNAを測定した。予想通りmRNAは低下していた。さらにCD3ζの代謝経路についても検討した。CD3ζの代謝酵素はmTORとRab4A, Rab4Bによって分解されるが、これらの酵素mRNAも鉱物油投与で低下していた。これらの結果から、まずCD3ζの低下とアルジニンは何らかの関係があることがわかった。さらに、CD3ζの低下はmRNAレベルでの低下が原因であり、CD3ζの分解酵素の活性上昇にようものではないことがわかった。つまり、CD3ζの低下はCD3ζの合成が鉱物油投与で阻害されて起こるものと考えられた。しかし、アルジニン低下がいかなるメカニズムでCD3ζの合成を阻害するかは現在不明で、次年度はこの点に絞って研究を行う予定である。CD3ζのmRNAが低下は、CD3ζの低下が多くの正常マウスで見られるため、CD3ζ遺伝子部分の変異は考えにくい。従ってこの部分にメチレーション等が関係していることが考えられる。次年度はこの点から研究する予定である。
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