研究概要 |
今年度の研究業績は、主に次の4点である。 (1) インフルエンザの流行変動と気象変動との相関を調べるために、その準備として、バングラディッシュとインド(コルカタ)で収集された、コレラ月別発生率データおよび気象データ(気温、湿度、雨量)の相互相関を把握する方法を構築した。インドについて得られた結果は、国際学会で最優秀ポスター賞を受賞した(K.Rajendran, A.Sumi et al.,2009年10月)。バングラディッシュについては、コレラ流行変動が気象データはもとより、太陽黒点数とも有意な相関を示すことが明らかになり、得られた結果が学術誌に掲載された(K.Ohtomo, N.Kobayashi, A.Sumi et al., 2010)。 (2) 日本のサーベイランス事業で収集されたインフルエンザ月別発生率データ(1948~1998)の予測解析を行った。その結果、インフルエンザの流行変動の予測値を定量的に示すことに成功した。得られた結果を論文にまとめ、現在、学術誌に投稿中である。 (3) 平成20年度から学術誌に投稿中の、日本のインフルエンザ月別発生率データの包括的な時系列解析結果をまとめた論文については、現在、査読者からの2回目のコメントに回答中である。この論文では、インフルエンザの流行変動の周期構造が、1957年と1968年の新型インフルエンザの出現時にドラスティックに変化することを定量的に明らかにしたものであり、セグメント解析というこれまで感染症の疫学では使われてこなかった解析方法を用いて新しい結果を得たという点で、画期的であると考える。 (4) 上述の(3)で述べたセグメント解析法を中国・武漢の麻疹月別発生率データに適用し、セグメント解析法の感染症の疫学における有用性が更に確かめられた。その結果を論文にまとめ、現在、学術誌に投稿中である。
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