研究概要 |
眠保健指導が労働者の心身の健康やQOLに与える効果について調べることを目的として、22年度は事業場で勤務する労働者を対象に、睡眠に関する個人保健指導を介入内容とする無作為割付比較試験を継続実施し、得られたデータの解析を行った。解析の結果、睡眠保健指導(睡眠衛生教育、睡眠時間制限法、刺激低減法などの行動療法、リラクゼーション)を行った群では、対照群に較べて3ヵ月後の睡眠状態が有意に改善していることが示された。また、QOL調査を行った事業場においては、精神的QOLが対照群に較べて有意に改善していることも示された。本研究は、自記式質問票調査だけでなく、夜間時の体動や自律神経のモニタリング(腕時計型生体センサを使用して夜間睡眠時のLF,HF、LF/HF、睡眠潜時、睡眠時間、睡眠効率、中途覚醒回数等の睡眠パラメータを測定)も用いて睡眠状況の評価や効果を客観的に検証していることが特徴であるが、これまでの解析の結果、血糖、脂質異常、肥満、血圧は、睡眠時の副交感神経の活動と有意に相関していることが示された。我が国においては、これまで睡眠保健指導に関する介入研究はほとんど実施されておらず、海外の研究においても労働者を対象とした睡眠教育の効果を詳細に検討した無作為化比較研究は存在しない。本研究は、睡眠の非専門家による非薬物的アプローチが有意な効果を示したものであり意義ある成果だと考える。睡眠保健指導の長期的効果(定期健康診断における血液、血圧、肥満等のデータ)については、今後もフォローアップしていく予定である。
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