研究概要 |
【はじめに】メタボリックシンドローム(MetS)発症には,インスリン抵抗性が重要な要因であると考えられている.特に疲労が蓄積・持ち越されやすい男性社員で,交替制勤務者のMetSリスク評価を行った. 【対象と方法】自動車製造企業男性社員のうち,明らかな睡眠障害の者,および糖尿病,高血圧,脂質異常症,心脳血管疾患,高尿酸血症のいずれかで治療中の者を除く34-64歳3,054人を対象とした.法定健診項目以外に血清インスリン(EIA法)を測定し,生活習慣問診票で勤務状況を確認した. 【結果およびまとめ】平常日勤1,700名,2交替勤務1,125名,3交代勤務182名,その他44名,欠損値3名であった.問診票による睡眠時間は,6時間以上975名,5~6時間1448名,4~5時間567名,4時間未満58名であった(欠損値3名).勤務状況別MetS割合は,平常日勤13.8%(234/1,700),2交替勤務10.7%(120/1,125),3交代勤務17.6%(32/182),その他18.2%(8/44)で,統計的有意差を認めた(p<0.05).勤務状況別にみた睡眠で休養が取れない割合は,平常日勤44.5%(750/1,685),2交替勤務50.1%(557/1,111),3交代勤務47.0%(85/181),その他52.3%(23/44)で,統計的有意差を認めた(p<0.05).勤務状況別の血清インスリン幾何平均(幾何標準偏差)は,平常日勤6.3(1.8)mIU/L,2交替勤務5.2(1.8)mIU/L,3交代勤務6.3(1.9)mIU/L,その他5.9(1.9)mIU/Lで,2交替勤務者のインスリン値は日勤者および3交替勤務者のそれらよりも有意に低かった,年齢,log(インスリン),log(ALT),log(GGT),尿酸,「喫煙なし」,「定期飲酒なし」,「定期運動あり」,「勤務状況カテゴリ」「睡眠時間カテゴリ」を説明変数とするMetS予測のロジスティック回帰分析(Wald法)を行ったが,統計的に有意な変数のオッズ比(95%信頼区間)は,log(インスリン)が63.1(34.0-117.3),log(ALT)が2.7(1.4-5.3),log(GGT)が3.5(2.1-5.9),尿酸1.3(1.1-1.4),年齢が1.06(1.04-1.08),「喫煙なし」が0.69(0.54-0.88)であった.MetSに関連する項目として血清インスリンが最も大きく,次に肝臓酵素,さらに尿酸であった.生活習慣では,喫煙しないことがMetsと負の関連性を認めた.しかし,勤務状況や睡眠時間はMetsと関連性がなかった.
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