研究概要 |
慢性飲酒による障害は、アルコール依存症などの精神的疾患から就業不能状態や家庭崩壊などの社会的問題を含んでいるだけでなく、身体的問題も含んでいる(Oyama et al.,2005)。厚生労働省から通知された「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」においても「アルコール(飲酒)」はひとつの分野として挙げられており、アルコール性臓器障害を予防することは社会的・医学的に重要な課題となっている。今回、Aldh2欠損マウスにアセトアルデヒドを皮下投与することで、肉眼的観察可能な表皮に扁平上皮癌を発生させる研究を行った。この表皮に発生した扁平上皮癌を分子生物学的・病理学的に検討することでALDH2不活性型の人に高頻度に発症する口腔・咽頭癌や食道癌などの発癌メカニズムを考察し、この癌の治療や予防に応用することを考える。このため、次の群のマウスを作製した。(1)約1年間(5日間連続投与後2日間の投与休止を繰り返す投与方法)の期間、それぞれ約10匹ずつの野生型・Aldh2欠損マウスに100mg/kg体重(LD50の1/5量に相当)のアセトアルデヒドを皮下投与。(2)アセトアルデヒド・エタノール皮下投与による野生型マウスとAldh2欠損マウスの発癌に関する比較・検討、また、数ヶ月の期間、それぞれ約10匹ずつの野生型・Aldh2欠損マウスに1g/kg体重(アセトアルデヒド投与量の10倍で、ヒトでは日本酒600mL程度に相当)のエタノールを皮下投与。(1)(2)のマウスの体重の変動を検討して、マクロ写真像と投与部位における皮膚病変(潰瘍,びらんや発疹など)の範囲を長軸×短軸で記録した。さらに、病変部を複数回生検して、その生検材料を用いてHematoxylin-Eosin(HE)染色による病理標本を作製して、腫瘍組織の病理学的変化を検討した。
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