研究概要 |
本研究は、専属産業医のいる事業場の在職死亡者事例について、個人情報を保護したうえで、死亡年月日、年齢、性別、死因、直近の定期健康診断結果(身長、体重、腹囲、血圧、脂質値、血糖値、喫煙習慣)の情報を取得し、(1)対象事業場の性・年代別死亡率を人口動態統計に基づく就業者の死亡率と死因別に比較すること、(2)定期健康診断結果と全死亡者に占める循環器疾患の割合との関係を調べることを目的として実施した。平成24年度は前年度と同様の方法で平成23年中の健康管理対象者数、死亡者数、死因等を調査した。平成24年12月末時点で25事業場から回答を得た。対象労働者数は137,753人、死亡者数は139人であった。人口動態統計と比較した標準化死亡比(SMR)は、男性0.351、女性0.461、昭和60年モデル人口による年齢調整死亡率(10万人対)は、男性103.2、女性51.4であった。男性の死因は、がん49.2%、循環器疾患19.4%、自殺8.9%で、がんは肺がんが7.3%と最多で、次いで結腸癌6.5%だった。女性の死因は15人中11人ががんであり、乳がんが4人と最多であった。死亡者の定期健康診断結果の解析では、循環器疾患での死亡者には、喫煙者、高血圧、高脂血症、耐糖能異常(境界域・糖尿病域)、メタボリック症候群及びその予備軍の該当者が多い傾向を認め、在職者の死因とこれらの要因との間に関連が示唆された。5年間の全死亡データの集計では、一般国民や一般就業者と比較し、対象集団ではいずれの年代においても全死亡のSMRは低く、特に50歳以上の循環器疾患、40歳代以上の自殺が低く抑えられていた。専属産業医のいる事業場では、健康診断の事後措置やメンタルヘルス対策が積極的に行われている事業場が多く、これらの死亡を抑制している可能性が示唆された。また、本研究成果を社会に還元するためのホームページを作成した。
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