本年度は、昨年度までに収集された検体を用いて、activation-induced cytidine deaminase (AICDA)の遺伝子多型とヘリコバクターピロリ菌の感染、萎縮性胃炎および胃がんの罹患リスクとの関係について検討した。 研究対象者は愛知県がんセンター病院の新来患者全員とし、専門の調査担当者が研究参加同意を確認し、記入要領等の説明を加えた後、診察の待ち時間を利用して自記式により調査しデータを収集した(調査担当者が記入漏れなどをチェックし回収する)。収集情報は、年齢、体格、既往歴、家族歴、喫煙・飲酒習慣、運動習慣、生殖歴関連要因、食習慣などである。診察終了後、回収された調査票はデータを愛知県がんセンター研究所疫学・予防部内の閉鎖データサーバー内に順次入力されている。また、回収調査票は鍵付きの保管庫内に保管している。更に、調査票による調査協力が得られた対象者については、研究者が研究趣旨等を説明し、文書にて同意の得られた対象者から7ccの血液提供を依頼し、血液試料の収集も同時に行い、提供された血液は愛知県がんセンター研究所疫学・予防部内の実験室において処理し、-80度で冷凍保存し、今回の遺伝子型の解析に使用した。がん患者を特定は、調査票データおよび遺伝子型の検索結果・生体指標測定結果を院内がん登録情報と照合して、がん既往歴のないその他の患者を非がん患者と同定した。 583名の胃がん患者と1637名の性・年齢を適合させた対照群を用いて検討したところ、ヘリコバクターピロリ菌の感染とAICDA 7888 C/T遺伝子多型との相関は見られなかった。また、リコバクターピロリ陽性群の中で、AICDA 7888 C/T遺伝子多型と萎縮性胃炎との相関も見られなかった。さらに、胃がんと萎縮性胃炎との相関も見られなかった。
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