研究概要 |
難分解性の有機塩素系農薬は内分泌かく乱作用を持つと懸念されている。これらの物質が日本を含む多くの国で使用されなくなってから数十年が経過しているにもかかわらず、未だに環境中から検出されている。 本研究の目的は北海道での妊婦の有機塩素系農薬曝露状況把握と次世代影響を明らかにすることである。2002から2005年に札幌市の一産院で採取した149名の妊婦(年齢、30.9±4.8;BMI,21.4±3.5)の血液中の有機塩素系農薬(29物質)について濃度測定し、妊婦属性と農薬濃度との関連、母の曝露が児の出生時体重に与える影響を明らかにした。 妊婦属性と農薬濃度との関連:妊婦の年齢が高いほどp,p'-DDE、クロルダン類、cis-ヘプタクロルエポキシド、β-HCH、マイレックスの濃度が高値であった。妊娠前体重が多いほどディルドリン、HCB、β-HCH、Parlar-26、Parlar-50の濃度が高いという結果を得た。 農薬濃度と児の出生時体重との関連:妊娠週数37週未満の児を除き、140名を解析の対象とした。児の出生時体重(3095±375g)に影響を与える要因(母の妊娠前BMI、母の妊娠中の喫煙、児の性別、児の出生時の妊娠週数)を調製因子として、重回帰分析を行ったところ、p,p'-DDE(p=0.05)、ディルドリン(p<0.05)、Parlar-26が正の関連を示した(p<0.05)。 1970年代の報告を参照すると、本研究の対象である札幌市とその近郊に住む女性の農薬曝露レベルは明らかに低い。しかし、妊婦の甲状腺機能への影響(H22年に報告)と児の出生時体重への曝露影響を検出したことから、継続的なサーベイランスが必要と考える。
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