1. 研究の概要 ; 北海道内2町在住の65歳以上高齢者のうち、基本チェックリストで1項目以上チェックの付いた者、特定高齢者、要支援1・2、要介護1の者の自宅に研究への参加依頼書を送付し、返信により328名から同意を得た。うち、主観的健康感、一般的信頼感、生活機能等を調べる事前評価を252名に実施した。その後、3地区(日高・門別・静内地区)のブロック別に対象者を無作為に介入群(128名)と対照群(124名)に分けた。介入群には保健師ら訪問者が月1回の計3回の予防型家庭訪問を行い、主観的健康感や生活機能等に影響を及ぼすと考えられる「在宅高齢者生活機能向上ツール(FIT)」による回想的介入を行った。次年度は事後評価を行い、事前事後評価の比較からFITによる主観的健康感、生活機能等への効果を検討する。 2. FITの特徴 ; 本研究では、小林(2004)が作成した「作業バランス自己診断」を改変したFITを開発した。4つのステップからなる。ステップ1では一日の活動を回想させ、ステップ2でこれら日常活動を義務と願望に区分させる。ステップ3で義務と願望の作業を集計し、ステップ4でそのバランスを見ながら高齢者自身が生活の目的や課題に気づき、自律的に対処していくヒントを得させる。従来の通所型・集合型介護予防プログラムにはない介入が可能である。 3. 研究の意義と重要性 ; 既存の介護予防プログラムの多くが高齢者のリスクやニーズに基づいて介入するのに対して、FITは高齢者が保持している能力・技術・経験などのアセット(資産)を活用することで、生活機能を活性化させるアセット・アプローチである点が他のプログラムと異なる。訪問者と高齢者が対等な関係を築き、両者の協働作業を通して段階的に生活目標の設定と達成を目指す。FITは今後の在宅における介護予防の新たな方策として政策化できる可能性があると考えられる。
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