研究概要 |
看護職の交代勤務に関連する睡眠障害は、勤務中の眠気や精神作業能率の低下を来たし、ヒューマンエラーを誘発し医療の安全を脅かす要因になっている。そこで交代勤務の看護職を対象に、眠気のセルフチェックが可能な眠気尺度の妥当性を検討し、日本語版Epworth sleepiness scale (JESS)はStanford sleepiness scale (SSS)を反映した簡便で効率よく眠気を検出できる尺度であることを確認した。そしてSSSの最大値を基準としたJESSスコアの一致性、感度・特異度を検討し、JESS(0-10/11-24)とSSS(1-3/4-7)が最も眠気を検出しやすいカットオフポイントであり、これは一般的に用いられる日中の過度な眠気のカットオフポイントと一致した。 以上の結果を基に、平成22年に北海道のA市内の5総合病院に勤務する看護職を対象に横断調査を実施し、1997人に配付し915人(45.8%)の有効回答を得た。JESSの平均点(標準偏差)は10.9±4.3点で、日中の過度な眠気の割合は48.4%と高い結果で,両者とも交代勤務と非交代勤務の間に有意差は認めなかった。夜勤前後の睡眠では、三交代勤務の深夜が平均3時間37分の短時間の睡眠であり、入眠潜時は「5分以下、20分以上」が多く、睡眠状況においても「ほとんど眠れない」が40%を越えており、質の良い睡眠がとれていない状況であった。主観的な睡眠の質は、「やや悪い」「とても悪い」が42.8%を占め、交代勤務が非交代勤務より有意に高かった(P<0.001)。主観的な睡眠の質とJESSの相関係数ρ=0.084であり、IESSが高値で眠気が強い状態でも主観的な睡眠の質を悪く評価していないことが考えられ、眠気が自覚しにくい状況にあることが推察される。以上のことから、勤務中における眠気のセルフチェックの必要性が示唆された。
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