研究概要 |
地域高齢者において、外出頻度が低下した状態である「閉じこもり」は、廃用性機序による身体的・精神的機能低下をもたらし、要介護状態のリスクとなることが知られている。同様に、閉じこもっていることによって社会との関わりがなくなり、社会的機会の損失(相談機会やソーシャル・キャピタルへの関わり)や自己効力感が低下することなどによる心理的影響によって、抑うつが進行しうつ病のリスクを高め、ますます外出しなくなるといった悪循環があると考えられるが、これは未だ検討されていない。本研究では、エビデンスが十分でないこの「閉じこもり」による機会損失-抑うつスパイラルをコホート研究によって検証することを目的としている。平成20年度は秋田県内H町(高齢化率 : 男性29.3%, 女性40.5%)において10月にヘルスボランティアの協力により悉皆調査を実施した(ベースライン調査)。調査は質問紙を外出頻度および閉じこもりに関する質問項目は、先行研究を踏まえ、さらに詳細な質問項目を作成し、抑うつ度については、K6質問票日本語版を使用した。また、これまでの自殺予防モデル事業での調査において抑うつと関連が明らかとなっている、日常生活ストレス要因、ソーシャル・キャピタル、自己効力感、地域活動への参加およびソーシャル・ネットワーク、喪失イベントの有無などを尋ねた。回収率は84.0%,有効回答率79.6%であった。記名および無記名(性・年齢の記入あり)で回答した65〜89歳の高齢者2,128人を分析対象とし、分析をスタートさせた。調査結果は結果報告会および、全体の結果をわかりやすくまとめたリーフレットともに個人結果表として返却(記名回答者のみ)した。
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