研究概要 |
地域高齢者において、外出頻度が低下した状態である「閉じこもり」は、廃用性機序による身体的・精神的機能低下をもたらし、要介護状態のリスクとなる。同様に、閉じこもっていることによって社会との関わりがなくなり、社会的機会の損失(相談機会やソーシャル・キャピタルへの関わり)や自己効力感が低下することなどによる心理的影響によって、抑うつが進行しうつ病のリスクを高め、ますます外出しなくなるといった悪循環があると考えられる。本研究では、エビデンスが十分でないこの「閉じこもり」による機会損失-抑うつスパイラルをコホート研究によって検証することを目的としている。平成20年度に秋田県内H町(高齢化率:男性29.3%,女性40.5%)において実施した初回調査(回収率は84.0%,有効回答率79.6%)において、記名および無記名(性・年齢の記入あり)で回答した65~89歳の高齢者2,128人について分析を行った。まず、一般性セルフエフィカシー尺度(Jerusalemら,1993)日本語版10項目による自己効力感と外出頻度との関連について多重ロジスティック回帰分析を行なった結果、「閉じこもり」と自己効力感の低下との強い関連が示唆された。さらに、過去1年以内における喪失イベント[(1)(配偶者、親、兄弟、友人などの)大切な人を亡くした、(2)(転職、休職、失業、退職など)仕事に変化があった、(3)(新たに病気に罹患、持病悪化、入院など)健康(体)に自信がなくなった、(4)(家庭、職場、地域における)役割が無くなった]の、「抑うつ傾向(KesslerらによるK6>9点)」に対する独立した影響を明らかにするために、多重ロジスティック回帰分析(強制投入法)により各変数を調整した結果、有意な関連がみられたのは「健康に対する自信の喪失」、「家庭や職場、地域における役割の喪失」であった。
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