研究課題
基盤研究(C)
高齢者の将来の転倒を予測するマーカーを探索する5つの研究を行った。研究1では高齢者の転倒・つまずきと下肢筋群筋力との関係を検討し、股関節伸展体重比と膝関節屈曲体重比の筋力が転倒・つまずきの判別に有効であることが明らかとなった。研究2では下肢筋群の各関節運動による発揮筋力が転倒なし群と転倒傾向群に違いがあるか検討した。その結果、股関節伸展と膝関節屈曲に群間の違いが観察され、転倒傾向群はこれら2種の関節運動の体重当たりの発揮筋力が転倒なし群に比べて低い傾向が示唆された。さらに、転倒傾向群では最大3歩幅の度数分布が転倒なし群に比べて低い値に偏っている傾向が示唆された。下肢筋群の屈伸比が0.55を下回ること、各部位の筋力左右差が15%を上回ること、各部位の筋力が20ポンド(約9.1kg)を下回ることは転倒やつまずきの発生に関係することが示された。また、最大3歩幅と下肢筋群筋力は有意な正の相関を示し、とくに股関節伸展と膝関節屈曲はより強い相関(股関節伸展.425,膝関節屈曲.423)を示した。高齢者の年間活動量を、歩数計を用いて1年間追跡し、毎日の転倒・つまずきの有無と発生回数を記録させて、季節変動との関係を検討した。歩数を指標とした活動量は冬と夏に減少した。転倒は年間を通じて発生していたが、すべてのつまずき17件のうち11件は冬に発生していた。下肢筋群筋力との関連性が強い最大3歩幅は、高齢者の将来の転倒・つまずきを予測するツールとして有用であることが示唆された。下肢筋群の筋力が20lbを上回るか、筋力の左右差が15%未満か、屈曲と伸展の比が0.55を上回るか、の3項目は最大3歩幅とともに、高齢者の将来の転倒・つまずきを予測するマーカーとして有用であると考えられた。これらのマーカーを利用しながら、転倒予防のエクササイズを実施するのは、活動性が低くなる前の秋期から始めることが推奨される。
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