多くの欧米および日本での研究より、魚油の有効成分[エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)]が心筋梗塞の予防に有効であることが判明したが、魚を多く食べる日本の疫学調査では、血中の脂肪酸構成を調査したものがなかった。そこで本研究では、「多目的コホートに基づくがん予防など健康の維持・増進に役立つエビデンスの構築に関する研究(JPHC Study)」(班主任 津金昌一郎国立がん研究センターがん予防・検診研究センター予防研究部長)において、集積されたデータ及び血液検体を用いて、EPAおよびDHAなどのω3系多価不飽和脂肪酸と心筋梗塞との関連を調べた。期間中に心筋梗塞と診断された209名(確実な心筋梗塞(心電図、酵素、剖検などによる)と可能性のある心筋梗塞(臨床症状、剖検所見などによる))と、以下の因子(性別、年齢、地域、採血時期、食後経過時間(±2時間)、採血から遠心までの時間)でマッチさせた対照者418名の血中脂肪酸を測定した結果、特に有意差は認められなかった(EPA組成比:症例2.59±1.42、対照2.69±1.48、DHA組成比:症例6.64±1.61、対照6.68±1.68)。また、交絡因子(喫煙状態、アルコールの摂取量、肥満指数、糖尿病歴、高脂血症または高血圧の内服歴、収縮期血圧、CRP濃度、総コレステロール値)にて補正し、条件付きロジスティック回帰分析を行った結果でも、EPA、DHAおよびアラキドン酸(ω6系多価不飽和脂肪酸)などのオッズ比に、特に有意差は認めらなかった。今回の結果より、ω3系多価不飽和脂肪酸と心筋梗塞との関連は特に認められなかった。
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