本研究は、胎生期における母親の生活習慣が、出生時のみならずその後の児の健康(特に小・中学生における肥満、こころの健康など)においてどのように影響するかを、妊娠初期からのコホート研究(胎生期コホート)によって明らかにすることを目的としている。 平成21年度は、平成20年度と同様、甲州市の小学校4年生から中学校3年生までの全児童・生徒を対象に、アンケートを用いて子どもの生活習慣を調査した。さらには、身長・体重・う蝕のデータ収集を、各小中学校を訪問して行った。これらのデータを、これまで20年間継続してきた、母子保健長期縦断研究データと連結することにより、妊娠初期から、最長で15歳までの発育・発達を検討するデータセットを作成した。 本データセットの一部である、約1500人のデータを用いて、平成21年度は、妊娠中の喫煙が、小中学生の肥満と関連があるかどうかを、生存曲線を用いた解析により検討し、また、男児と女児で妊娠中の喫煙の影響に違いがあるかどうかについては、マルチレベル分析を行って検討した。さらには、リスクである妊娠中の喫煙について、2000年前後の5年間で、関連する因子に違いがあるかどうかを検討した。 その結果、妊娠中の喫煙率はここ10年間で微増であるが、その関連する因子については変化がみられることを明らかにし、原著論文として発表した。また、生存曲線による解析により、喫煙による影響が小中学生に及んでいることを明らかにし、国際学会で発表した。さらには男児と女児で妊娠中の喫煙がその後の発育に及ぼす影響に差がある可能性を明らかにし、こちらについても国際学会で発表を行った。
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