2007年に愛知県の某職域を対象に行った生活習慣アンケート調査をデータベース化し、利用した。本年度は、出生時体重と食習慣の1つである食べる速さ(かなり速い、やや速い、普通、やや遅い、かなり遅い)に着目し、両者が成人期の肥満に与える影響について分析した。対象は、これら全ての調査項目を有する男性1978名(36-65歳、平均48.2歳)、女性537名(37-62歳、平均46.6歳)である。男性では、食べる速さが「かなり早い」と答えた人の割合は、2500g未満群、2500-<3000g群、3000-<3500g群、3000g以上群の順に、19.5%、15.1%、12.1%、18.7%と2500g未満群が最も高かった。女性においても、同順に18.0%、16.1%、6.7%、4.5%と同様な傾向を示した。男性において、2500g未満群と3500g以上群の肥満者割合が各々28.5%、30.1%と高かった。出生時体重別に食べる速さと肥満との関連をみると、2500g未満群において「速い、「普通」、「遅い」の3群に分け順に、肥満者の割合は39.2%、13.2%、9.1%と統計学的に有意な関連がみられた。一方、3500g以上群では、順に33.7%、25.0%、27.8%と統計学的に有意な関連はみられなかった。女性ではこのような交互作用はみられなかった。本研究結果をもとに、低出生体重児が成人期に生活習慣病になることを防ぐ方策を考えると、家庭内では、幼少期から正しい食行動を身につけられるようにすることが大切であるといえる。さらに、保健の場においても、早期に体重標準曲線の正常域に入ることを良しとする保健指導は慎むべきである。そのためにも、低出生体重児に対して一生の健康を見据えた成長曲線の開発が強く求められる。
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