研究概要 |
本年度は2つのコホート研究について、下記の検討、調査を実施した。 1. 歯科医師を対象としたコホート研究自記式調査票にて口腔状態を把握でき、歯科医師会を通じた追跡調査が可能な歯科医師を対象としたコホート研究である。本年度は2010年6,月までの追跡調査を行い、歯牙喪失と死亡および疾病罹患リスクとの関連を解析した。今回の分析対象は21, 147名(ベースライン時平均年齢±標準偏差52.3±12.2歳、女性8.0%)、平均追跡期間は6.2年間である。歯牙喪失と死亡リスクとの関連の解析では、840名の死亡が同定された。喪失歯数(智歯除く、以下同じ)が0-4本を1とした、5-9、10-14、15-19、20-24、25-28本のグループの死亡ハザード比は、それぞれ1.09、1.30、1.39、1.52、1.28であり、喪失歯数25本以上の場合を除き、喪失歯数が増加するほど死亡リスクが上昇する傾向が認められた(trend P=0,009)。また歯牙喪失と脳卒中・虚血性心疾患・がん罹患との関連の検討では、追跡期間中に脳卒中221名、虚血性心疾患155名、がん649名の罹患が確認された。このうち脳卒中については、喪失歯数が0-9本の場合を基準とした、同20本以上の罹患ハザード比が1.70で有意な上昇を認めた。一方、喪失歯数と虚血性心疾患・がんの罹患リスクとの間に有意な関連はみられなかった。さらに追跡期間中に肺炎死亡34例、大腿骨頚部骨折罹患20例(50歳以上の男性に限定)が確認され、ともにリスクは喪失歯数が多い場合に有意に高かった。喪失歯数0-14本を基準とすると、全歯喪失の場合のハザード比は肺炎死亡が3.41、大腿骨頚部骨折が4.54であった。 2. 高齢者を対象としたコホート研究本年度は平成16年、65歳時にベースライン調査に参加した研究参加者(1市に在住)のうち同意が得られた者について、70~71歳時の追跡調査(調査票調査、血圧、血液生化学などの検査)を実施し、高血圧症、糖尿病、脂質異常症などの新規発生を把握した。
|