研究概要 |
本研究は、動脈硬化への食事習慣、特に魚介類に特異的に含まれる長鎖n-3系多価不飽和脂肪酸(LCn-3PUFA)の関連に男女差があるかを、日本人とハワイ在住日系米国人の一般集団の対象とした栄養疫学研究(INTERLIPID研究)より明らかにすることを目的としている。今年度は、動脈硬化危険因子であることが明らかになりつつある、小型LDL粒子(small LDL particle,s-LDLP)濃度と食習慣との関連を検討した。INTERLIPID研究の対象である40-59歳の日本人とハワイ在住日系米国人(男性478名、女性477名)の栄養調査結果および核磁気共鳴分析法で測定したs-LDLP濃度を用いた。重回帰分析により、食事因子を含め、どの生活習慣因子がs-LDL濃度の日本・ハワイ差を説明するかを男女別に検討した。 男女とも、日本よりハワイでs-LDLP濃度は高かった(男性862nmol/Lvs.1211nmol/L;女性520nmol/Lvs.1016nmol/L)。年齢調整したs-LDLP濃度の日本・ハワイ差を重回帰分析により計算し、このモデルにBMI、喫煙本数(/日)、身体活動度、栄養素摂取量(23種)を1因子ずつ追加しs-LDLP濃度の日本・ハワイ差に影響があるかを検討した。BMIは男性ではs-LDLP濃度差の72%を、女性では13%を説明した。男性ではこの他、喫煙本数、LC n-3 PUFA摂取量および植物性タンパク質摂取量がs-LDLP濃度差に関連し、これらの因子が日本・ハワイ差の90%を説明した。同様の解析で、女性ではBMI以外で、日本・ハワイ間のs-LDLP濃度差を説明する生活習慣因子を認めなかった。 LC n-3 PUFAを含めた食事因子の動脈硬化危険因子への関連の男女差を示唆するものであり、血清脂肪酸濃度との関連を含めて今後さらに検討が必要である。
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