本研究は、動脈硬化への食事習慣、特に魚介類に特異的に含まれる長鎖n-3系多価不飽和脂肪酸(LCn-3PUFA)の関連に男女差があるかを、日本人とハワイ在住日系米国人の一般集団の対象とした栄養疫学研究(INTERLIPID研究)より明らかにすることを目的としている。今年度は食事性の脂質の質の変更が血清LDLコレステロール値に与える影響を検討するために、工場従業員男女(男性19名、女性6名)を対象として、高LDL血症改善を目的とした3カ月間の保健指導を行った。特に減量の指導は行わず、飽和脂肪酸の摂取を控え多価不飽和脂肪酸の摂取を多くする食事指導を行ったところ、保健指導前後の血清LDLコレステロール値の変化量は男性で-5.63mg/dl、女性で-16.00mg/dlと女性でコレステロール値改善の効果が大きい傾向がみられた(p=0.317)。血清脂肪酸分画を保健指導前と後で測定したが、多価不飽和脂肪酸構成比の変化が女性でみられた(男性では-0.83%、女性では+3.51%)など、女性で血清脂肪酸に変化がみられた。肥満度も血清LDLコレステロール値に影響するが、保健指導の前後のBMI変化量は、男性で+0.06kg/m^2、女性で-0.28kg/m^2であった。例数が少ないこともあり、血清脂肪酸分画および肥満度の変化と、血清LDLコレステロール値の変化の関連の男女差については検討できなかったが、生活習慣変化の血清脂質への影響の男女差の可能性を示唆するものである。対照数の多いデータセットを用いて、肥満度など関連する因子を調整したうえで、食事性脂肪酸摂取と血清脂肪酸濃度、LDLコレステロールなど血清脂質との関連を検討する必要がある。
|