研究概要 |
【目的】n-3系脂肪酸代謝、特にアルファリノレン酸(ALA)→エコサペンタエン酸(EPA)における男女差が、動脈硬化性疾患、特に虚血性心疾患(CHD)発症の男女差に関連している可能性がある。INTERLIPID研究で得られた、40-59歳男女、日本人とハワイ在住日系アメリカ人(以下ハワイ)の血液検体(随時採血)を用いて、血清リン脂質を定量した。測定はピッツバーグ大学疫学研究部Heinz Laboratoryでガスクロマトグラフィー法を用いて行われた。各対象者について4回行った24hr思い出し法による栄養調査より得た、食事性のこれら脂肪酸の摂取量と血清脂肪酸量を比較した。ALAは植物性油脂に一般に含まれるが、EPAは魚介類に特異的に多く含まれる脂肪酸であるため、国別に男女間比較を行い男女差について検討した。【結果】血清脂肪酸を定量できた、日本人(男558名、女558名)、ハワイ(男100名、女105名)を解析対象とした。栄養調査からのALA:EPA摂取量(%kcal)は、日本人男で0.45:0.79,女で0.33:0.83、ハワイ男で0.05:0.70,女で0.04:0.73であった。血清脂肪酸分画では(%)、日本人男で4.64:0.24、女で4.14:0.26、ハワイ男で0.81:0.18,女で0.89:0.19であった。血清脂肪酸分画でのALA、EPA測定値は食事性各脂肪酸のALA→EPA代謝の影響を検討するため、EPA/ALA比を、栄養調査結果と血清脂肪酸分画でそれぞれ計算し(NEA比とSEA比)、さらにその男女差を検討するため、日本、ハワイそれぞれでSEA比/NEA比を計算したところ、この値は日本で、男で33.3、女で39.4、ハワイ男で59.9、女で86.1であった。【意義】SEA/NEA比が大きいことは、食事性ALA→EPA代謝が盛んであることを示唆し、これが男性よりも女性で、また食事性EPA摂取の少ないハワイで高値であることは、ALA摂取がEPAへの代謝を通して女性おいて、またハワイにおいてCHDに予防的に作用している可能性を示した。
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