研究概要 |
肥満を基盤病態とするメタボリックシンドロームなどの生活習慣病対策は急務の課題である.特定健診・保健指導も開始され,健康教育の方法論はもとより,その評価指標においてさらなる考究が望まれている。最近,様々な酸化分子が測定可能となってきたが,本課題では,予防医学的または健康科学的設定における生活習慣病に対して,酸化LDLや酸化ストレスを測定する意義を検証していくことである.初年度にあたる本年度においては,酸化LDLの一種の血清アミロイドA-LDL複合体(SAA-LDL)を適用した脂質異常症への健康教育的介入研究で,まず成果を得た,われわれは,血中SAA-LDLがメタボリックシンドロームの病態と有意に関わり,特に血管炎症を意味する血清C反応性蛋白と正相関する特徴を以前に報告してきた,今回,脂質異常症を呈する,研究に同意の得られた対象集団(100名,男性21%,平均59歳,BMI26kg/m^2)において,6か月の食事療法と運動療法を導入した.この介入前後で,BMI,血圧,中性脂肪,血糖,SAA-LDL(22→16μg/ml)は有意に低下した,これらの前後の変化量について重回帰分析を行うと,〓SAA-LDLに対して〓中性脂肪と〓HDLコレステロールは,体重などとは独立して有意な相関を示した.こうした結果は,生活習慣是正による中性脂肪やHDLコレステロールの抗動脈硬化的作用機序に,SAA-LDLが一部介在している可能性を示唆しており,さらに,SAA-LDLは酸化と炎症を同時に表現していることを考慮すると,現在汎用されている脂質指標を凌駕した活用の可能性さえ展望できた.また,本年度は,健康教育の対象をさらに増設することも行い,複数の集団が既に登録され,食事と運動の行動変容をモニタリングしながらの介入フェーズに入っている.生活習慣病とその生活習慣の介入における酸化分子マーカーの関連や意義の検討を蓄積し,同マーカーを含む評価指標を採用した健康教育システムについて提案することを,引き続き目指す予定である.
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